エストニアの首都タリン (Tallinn; ドイツ名「レーファル（Reval）」）は，トーンペア（Toompea）と呼ばれる小高い丘に築かれた城を中心に，13世紀半ば以降，ハンザ都市として発達した町で，その人口は1917年にはすでにほぼ16万人に達していた。
現在のタリンの住民の民族構成は，ソ連時代に起こったロシアからの大量の人口流入の結果，約50万人のほぼ半数（48.5％）がロシア語系となり，エストニア人（47.4％）をやや上回っている（1989年）。エストニア国内のロシア語系住民の約半数がタリンに住んでおり，その８割は戦後の移住者である。
ロシア語系住民の割合がエストニア人の割合と拮抗するタリン市では，ロシア語系住民の民族的権利に関する意識が，他の地域と比べてもっとも鮮明であり，1993年秋以降は，タリン市議会の議席の半数近くを占めるロシア語系議員が，エストニア全体のロシア語系住民の永住許可を求める要求を先導する活動を行なっている。